「エキセントリック スイープ ワイパー」

1985年にW124に搭載された、シングルワイパー「パノラマワイパー」を、ヤナセでは当初「伸縮式アーム」と呼んでいましたが、メルセデスは「eccentric clean sweep」あるいは「eccentric sweep wiper」と呼んでいました。「eccentric(エキセントリック)」とは「普通のものとはひどく変わったさま・風変わりなさま・型破りな」の意で、何が「エキセントリック」かと言うと、一般的なシングルワイパーは単純な「弧の往復運動」であるのに対し、「パノラマワイパー」は1本のアームを伸び縮みさせながらスイングさせること(アルファベットのMを描く様な動き)で、ワイパーのふき取り範囲86%カバーを可能にしたことです。さすがメルセデスと言える仕事ぶりですね。一方でその巧妙な動きを可能にする機構は複雑で、それゆえの問題も孕んでいたのも事実でした。

1985年のW124搭載と同時期にW201にも搭載され、その後のW202,W210,R192にも搭載されましたが、90年代半ばのW203以降は2本ワイパーになりました。なぜ「パノラマワイパー」が廃止になったのか、メルセデスの公式な答えはわかりませんが、ファンの間では「コスト削減対策」が専らです。他には「大雨量時に対応し切れない」・「左右への払い水飛ばし」が原因というものあります。面白いものに「大袈裟なブレードの動きで車が揺らされる」・「ブレードの動きが滑らかすぎて単調で、ドライバーに睡眠効果をもたらす」等々がありました(笑)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・YouTube - furulevi より

「パノラマワイパー」は80年代のメルセデスの物作り哲学「最善か無か」が生んだ1アイテムです。シングルワイパーの動きをここまで昇華させた「ゲルマン・クラフトマンシップ」はさすがと言うほかはありません。

この画期的なワイパー機構が、いつの間にか消えてしまったことは残念でしかたありませんが、言い換えれば「W124世代(W201・W210・W202・R129)でしか味わえないギミック(特別な仕掛け)」と言えるでは・・・