三国同盟

陸軍三式戦闘機  キ41「飛燕」
陸軍三式戦闘機 キ41「飛燕」

■ 先日ネットのニュースで目に留まった記事に「飛燕の部品、相次ぎ発見」(岐阜新聞Web:7月25日)がありました。「飛燕」とは第二次世界大戦中に川崎航空機(現:川崎重工業)が製作した、川崎キ61陸軍三式戦闘機の事で、空冷エンジンが主流だった日本軍機の中では珍しく液冷エンジンを搭載していた為に機首が絞り込まれた独特のシルエットは、プラモ少年だった私には特にお気に入りの機体でした。この液冷エンジン(川崎ハ40)が実は「ダイムラー・ベンツ社 DB601」のライセンス生産だった事をつい最近知りました。

Bf109の生産ラインとDB106エンジン
Bf109の生産ラインとDB106エンジン

■ DB601は液冷倒立V型12気筒の航空機用エンジンで、直接燃料噴射式・遠心式スーパーチャージャーを備え1100HPを発生し、当時としては非常に高度で複雑な革新的機構を多数採用されていて、第二次大戦のドイツ空軍の主力戦闘機「メッサーシュミットBf109」に搭載され連合国側に対し猛威を振るいました。特に「バトルオブ・ブリテン」でのスピットファイアー(ロールスロイス製V型12気筒エンジン・マリーン搭載)との空中戦では圧倒的に優位性を示しました。しかし大戦末期には改良されたマリーンを搭載したアメリカのノースアメリカン P-51ムスタングの登場により完全に立場は逆転してしまいました。

メッサーシュミット Bf109E
メッサーシュミット Bf109E

■ 当時は日独伊、枢軸国・三国同盟の時代でこの「ダイムラー・ベンツDB601」エンジンはイタリアでもアルファ・ロメオ社でライセンス生産され、「マッキ mc202 フォルゴーレ戦闘機」が開発されました。日本では川崎の他にもう1社愛知航空機(現:愛知機械工業)でも「熱田21型」としてライセンス生産され海軍艦爆「彗星」に搭載されました。残念な事には当時の日本の工業力(工作技術力)では「ハ40」・「熱田21型」共にDB601本来の性能を発揮するまでには至らず、飛燕・彗星は大した戦果を上げることなく終戦を迎えることになりました。

Mercedes-Benz T80 (Benz Museum)
Mercedes-Benz T80 (Benz Museum)

■ このDB601の排気量(33,929cc)を44,000ccまで拡大したDB603を搭載したのが「T80」自動車最高速挑戦車です。「T80」は自動車の世界最高速記録を樹立することで国威発揚に役立てようと考えたヒトラーの命により、フェルディナント・ポルシェが設計を、ダイムラー・ベンツが製作を担当しました。フェルディナントの計算では当時イギリスが持っていた世界記録484.955Km/hを遥かに凌ぐ700Km/hを想定していましたが、残念なことに戦局の激化によりチャレンジすることなくお蔵入りとなりました。

 

■ 結局、日独伊三国は共に戦争に敗れ(伊は少し事情は異なりますが)、廃墟と厳しい制裁の中から戦後の再スタートをきる事となりました。そしてそれから70年後の今日では三国は共に自動車産業で世界をリードするまでに復興・発展しました。世界は今、グローバル化の波の真っ只中にいます。これは経済の覇権を争う「経済戦争」です。日独伊は自動車産業を「武器」に今再び「三国同盟」を結成し、この戦い <<「経済戦争」と「勝者の論理の戦後秩序」とやらへの挑戦>> に挑むというのは・・・・・敗戦記念日も近いことですし ^^;        ・・・・・(六)