エックス・バイ・ワイヤ

F-16 Fighting Falcon
F-16 Fighting Falcon

■ 自動車の最新技術の1つに エックス・バイ・ワイヤ(X-by-Wire)があります。この「Wire」とは「電線」を意味し、従来の自動車の運転は人の操作(入力)を油圧や鋼製ワイヤ・ロッドリンク等の機構を介して作動させていましたが、これらの機構を電気的に置き換えて行う技術を「by Wire」と言います。電気信号化する事によりソフトウエアだけで高度な車両制御が可能となります。前項の「自動運転」を実現できたのもこのエックス・バイ・ワイヤの技術進歩があってからこその事なのです。スロット・バイ・ワイヤ、ブレーキ・バイ・ワイヤ、ステア・バイ・ワイヤ、シフト・バイ・ワイヤ等があり「エックス・バイ・ワイヤ」はその総称です。

■ 先行分野に航空機のフライ・バイ・ワイヤ(Fly-by-Wire)があります。1974年初飛行ジェネラル・ダイナミクス社製 F-16 ジェット戦闘機に搭載されたのが最初で、操縦部(操縦桿など)から作動部(動翼)への情報伝達を電気信号に置き換える事により、機体の軽量化・整備性の向上・コンピューターによる操縦の高度化(安全性や燃費の向上)などが実現しました。現在では多くの民間旅客機も採用されています。

世界初のブレーキ・バイ・ワイヤ搭載は2001年トヨタ エスティマ ハイブリット
世界初のブレーキ・バイ・ワイヤ搭載は2001年トヨタ エスティマ ハイブリット

■ エックス・バイ・ワイヤ化の大きなメリットとして、ソフトウエアによる制御の幅が広がることがあります。例えばブレーキをバイ・ワイヤ化すれば現在は複雑な機構が必要になるABS(Anti-Lock brake System)や横滑り防止装置・緊急ブレーキ時のアシスト等も、制御ソフトウエアだけで実現可能となります。

バイ・ワイヤの中で既に広く普及しているのが、スロットル・バイ・ワイヤです。いわゆる「電子制御式スロットル」でドライバーのアクセル・ペダル開度をセンサーで読み取り、その信号を伝達してモーターでスロットル・バルブを開閉します。自動変速機と同調させたりリーンバーン・エンジン等で空燃比の調整に合わせた繊細なスロットル操作が可能となりました。

2001年10月BOSCH製ブレーキ・バイ・ワイヤ(セントロニック・ブレーキ・コントロール)装備のSLクラス(R230)を発売。翌年Eクラス(W211)を発売するが不具合が相次ぎ、後期モデルでは従来の油圧式に戻る事となった。
2001年10月BOSCH製ブレーキ・バイ・ワイヤ(セントロニック・ブレーキ・コントロール)装備のSLクラス(R230)を発売。翌年Eクラス(W211)を発売するが不具合が相次ぎ、後期モデルでは従来の油圧式に戻る事となった。

■ ステア・バイ・ワイヤは2013年登場の日産スカイライン・ハイブリットのダイレクト・アダプティブ・ステアリングが量産車世界初として話題になりました。このシステムは2001年メルセデス・ベンツSL(R230)のブレーキ・バイ・ワイヤSBC(sensotronic brake control)と同様にバイ・ワイヤと言っても緊急用として従来の機構をそのまま備えている事から、完全バイ・ワイヤへの過渡期のシステムと言えます。ステア・バイ・ワイヤの課題は道路インフォメーションのフィードバックをどのようにするかがありますが、レーンキープのサポートや横滑り防止装置との統合制御を行うことで、場合によってはカウンターステアを当てるなどより高度な運転制御が可能となりす。

 

■ エックス・バイ・ワイヤのその他のメリットとして、機構部分を無くする事による軽量化・コンパクト化でコストの低減やメンテナンス性の向上などの他、レイアウト性の向上・パッケージングデザインやインターフェースの柔軟性が増すことにより、従来とは形・大きさ・操作方法の全く異なる自動車が生まれる可能性があることなどが上げられます。

・・・・・「可能となる」ばかりで良い事ずくめ。お陰で自動車は益々ロボット化して行きます。これも時代の流れなのでしょうが、私のようなアナログ世代はもはや付いて行けません。(T_T) ・・・(六)