■「AMG」といえば今やメルセデスファンならずとも、大方の自動車好きなら知るところのメルセデス・ベンツのハイパフォーマンスカー(パフォーマンス部門)の事です。我が国においては1986年までベンツの輸入元だったヤナセがAMGも正規インポーターとして扱ったため、早くから輸入車ファンに知られたブランドでした。AMGは1967年にメルセデスのチューナーとして産声を上げ、1971年のスパ24時間耐久レースで300SEL 6.8AMGを駆り総合2位・クラス優勝を果たし、一気にその名を世に知らしめる事になり、1988年にメルセデスのワークスとしてドイツツーリングカー選手権(DTM)に参戦すると同時に、市販モデルの開発販売面でも正式パートナー契約を交わす事になりました。
1993年には共同開発したC36が正規カタログモデルとなり、このC36は大ヒットモデルとなりました。1999年にメルセデス傘下に組み込まれ2005年には100%子会社となり、以降今日に至るまでAMGは高性能・高品質を標榜するメルセデスベンツのフラッグシップモデル、イメージリーダーとして君臨し続けています。
■ 右に歴代の名車を掲げます。
1)AMG 300SEL 6.8 :「RED PIG」~”赤いモンスター”の愛称を持つマシーンで、スパ24時間耐久レース初参加にして総合2位・クラス優勝の快挙を成しその名を世に知らしめる事となったAMGの歴史的アイコンです。
2)AMG 560SEC 6.0-4V :メルセデスV8M117型の腰下ブロックをベースにAMGが6.0Lへとアップデートし、その6.0のブロックにコスワース製のツインカム4バルブ・ヘッドを組み込んだ通称「ハンマーヘッド」エンジンは圧倒的なトルクによる豪快な走りと、そのアグレッシブな外観と相まって「獰猛」と呼ぶにふさわしく・・・これぞ第一世代AMGの真骨頂!!
3)AMG 300CE 6.0-4V HAMMER WIDE VERSION :上記ハンマーエンジンを無理やりW124のボディに押し込み、当時の社長アウトレヒィトにして「最も印象に残る1台」と言わしめ、余りの過激な走行性能の高さから、スリーポインテッドスター・マークを外して販売したなどの逸話が残っています。
4)190E 2.5-16 EVOLUTIN 2 DTM :1992年、ついにDTMで総合優勝を獲得。クラウス・ルドヴィックがドライバーズ・タイトルを、メルセデス・ベンツがマニュファクチャラーズ・タイトルを、そしてAMGはチームポイント・タイトルを獲得し、以後AMGメルセデスの怒涛の快進撃が始まります。
5)C36 AMG :メルセデス・ベンツと初の共同開発となったC36。結果は大成功を収め、これがきっかけで両者の関係がますます緊密となった記念すべき一台です。
6)AMG GT :2013年秋に生産を終了したSLS AMGの実質的な後継車にあたり、我が国においても既に予約受付が始まっており、近日にはデリバリーされるとの事。現行AMGラインナップの中のフラッグシップモデルです。
■ 上に掲げた車がAMG「直系の児」とするなら、次に掲げる3台は「異端児」?
・三菱デボネアV3000 ロイヤルAMG :「デボネアV300
ロイヤル」をベースに、AMGデザインのアエロパーツ、アルミホイール、ステアリング、デュアルテールパイプ、メーカーオプションの電子制御サスペンション(ECS)を装備。またタイヤサイズを14inch/70から15inch/60に変更しサスペンションも固められ、外装色はサラエボホワイトのみとされた。その後エンジンやECS,AT等の改良を重ね1986年から1991年までの間に延べ331台が生産されました。
・三菱ギャランAMG
:1989年、E3#系ギャランデビュー2年後に行われたマイナーチェンジ時の目玉として「ギャランAMG」が追加されました。4G65+FFの型式E33Aモデルをベースに、エンジン、足回り、エクステリア、インテリアと多枝に渡りファインチューニングされていましたが、AMGが直接手を掛けたのは、エクステリア・インテリアデザインとウッドパーツの生産、マフラーチューニング程度であり、エンジン・足回りは三菱がすすめたと言われています。1989年から1992年までの間に延べ1395台が生産されました。
・Diavel AMG-Ducati :2012年
メルセデス・ベンツAMGとドガティのコラボレーションモデル「ディアベルAMGスペシャルエディション」。AMGデザインの専用鍛造ホイール、専用マフラー&エクゾーストシステム、専用アルカンタシート、シリアルナンバー等を装備。このAMGモデルはこの年にドガティがアウディ傘下となったこともあり同年限りとなり、生産台数は不明で日本には130台が輸入されました。
■ 以上の3台の内、Diavel AMG-Ducatiが2012年のモデルという事は、現在のAMGすなわちメルセデス・ベンツのハイパフォーマンス部門としての仕事でありますが、イタリアの二輪メーカーとのコラボレーションにどのような策略があったのかは伺い知ることはできません。一方の三菱デボネア・ギャランに関しては1986年~1992年のAMGは、まだメルセデス傘下ではないものの非常に勢いのある時期であった事と、日本においてAMGは既に知名度の高いブランドであった為に、三菱の求める「プレミアム」性とAMGの事業拡張志向とが合致した結果のコラボレーションだったと想像できます。メルセデス・ベンツのブランドイメージの旗手となった現在のAMGでは考えられないコラボレーションではないでしょうか?・・・・・・まさにAMGの「異端児」です (六)