■ "最善か無か"はメルセデス・ファンなら誰でも知っている、ダイムラー・ベンツ社のスローガンです。一切の妥協を許さない完ぺきな車作りを目指すと言うダイムラー・ベンツ社の哲学でもありました。
またキャッチコピーとして"全ての形には理由がある"もよく知られていますが、元は前々項でも紹介しましたルイス・サリバンの"形式は機能に従う"とされます。機能を突き詰めて生まれた形はシンプルで且つ、研ぎ澄まされた美しさ(機能美)を持っていると言うことです。
そして"シャーシはエンジンよりも早く"はどこの自動車メーカーよりも早くから「車の安全性」を優先して来たダイムラー・ベンツ社のポリシーでした。
■ これらの「言葉」の生まれた背景には、実直で質実剛健で完璧主義というドイツ人の気質にあります。20世紀初頭のモダニズム運動全盛期に設立された「バウハウス(工芸・デザイン・建築・美術等の総合教育学校)」が合理主義・機能主義の理念を確立し、ドイツは近代デザインの先駆けとなり後の世に大きな影響を及ぼす事となりました。またドイツが生み出す多くの工芸品・工業製品は世界のベンチマークとなりました。
■ 1986年登場したW124シリーズは、安全性と品質を機能美に満ちたボディで包み込んだダイムラー・ベンツ社の理想を具現化した渾身の作品で、その出来栄えは世界の自動車メーカーに衝撃を与えました。
■ 「勝者必衰の理」、90年代中ごろ以降のダイムラー・ベンツ社の歩んだ道は誰もが知るところです。迷走の中自信を失ったのか、何時しか"最善か無か"や他の"言葉"は聞こえなくなりました。
■ それが復活していたのです(私だけが知らなかったのか?)。正確には2010年7月よりキャッチコピーとして再びCMに登場していました。・・・と言う事はダイムラー社(現在の正式社名)は、それはきっと再び車作りに自信を取り戻したと言う事なのでしょう(?)。
右の写真は最新のCLA250です。現代版の"最善か無か"を具現化したモデルです。上の190Eと比べれば(車格は少し違いますが)両者には約30年の隔たりがあります。これを正常進化と言えるのでしょうか・・・それとも・・・その答えは人それぞれで良いのでは。 ・・・・・ (六)